現代美術家/書家 中嶋宏行 


Photo:Dana de Luca
Photo:Dana de Luca

BODY

画面は床に敷かれています。私は画面と向き合うのではなく、画面の中に自ら入り込んでいきます。腰を落とし、身体を少しかがめ、間をとりつつ、手足は円弧を描きます。太極拳の動きです。頭でなく手足を使うとそこに他力が働き、思惑を超えた何かが起こります。頭で作り上げるものではない、それは手足からふと生まれるもの。

既知の自分は氷山の一角、水面下には未だ見ぬ自分が眠っている。


タイトル: 光
タイトル: 光

TIME

ひとたび筆をとったら最後まで一気に書くのみ、休止や後戻り、書き直しはしません。起点から終点まで線を順にたどれば、時間の流れとともに筆がどう動いたのか思い描くことが出来ます。筆の軌跡はすなわち時の流れであり、作品は音楽や舞踊と同様、時間とともに現前します。「いま、ここ」に生きた証しとして、見ることの出来ない時間美を唯一無二のかたちに結晶させたい。

ゲーテは「建築は氷結した音楽」と言い、西田幾多郎は「書は凝結せる音楽」と言った。そして思う、「書は凍結したアクション」ではないかと。


Photo:Sergio Maria Calatroni
Photo:Sergio Maria Calatroni

NATURE

筆を宙でサッと振ると、墨はパッと紙の上に飛び散っていきます。筆をそっと置くと、墨はゆっくりと紙の上をにじみ始めます。どちらも自然の作用であり、コントロールは出来ません。しかし、思い通りに行かないからといって排除はしません。敢えてこれを受け入れることで、作品は自然の力とともに生まれます。東洋の「自然」という言葉は人を含めた万物全体を示します。人も自然の一部。

いま考えるべきことは、「いかに自分たちのために自然をコントロールするか」ではなく、「いかに自然のために自分たちをコントロールするか」ではないか。