無 為 自 然

 筆を宙でサッと振ると、墨はパッと紙の上に飛び散っていきます。筆をそっと置くと、墨はゆっくりと紙の上をにじみ始めます。どちらも自然の作用であり、コントロールは出来ません。しかし、思い通りに行かないからといって排除はしません。敢えてこれを受け入れることで、作品は自然の力とともに生まれます。東洋の「自然」という言葉は人を含めた万物全体を示します。人も自然の一部。いま考えるべきことは、「いかに自分たちのために自然をコントロールするか」ではなく、「いかに自然のために自分たちをコントロールするか」ではないか。